過去をそっと抱きしめる

「嵐を宝箱に閉じ込めたい。綺麗に、誰にも汚されないように。」

なんて綺麗で、儚くて切ない言葉なんだろう・・・。

私にとって彼らと過ごした12年間という時間は、きらきらと光るたくさんの宝が詰まっている。宝の中には薄汚れてたり、他人から見たらガラクタと思えるようなものだってある。それでも私にとって、かけがえのない大事な大事な宝なのだ。

 

12年の最初の6年くらいは見るもの全てが新しくて、驚きながら、無我夢中で思い出を詰めていた。宿題くんやまごまご、そして5X10でのアカペラの感謝カンゲキ。あの時札幌で聞いた彼らの歌声は、感動以上の鳥肌が立ったのを覚えている。今まで感じたことのない何かが全身に走って。彼らに風を送り続けたい、本気でそう思った。

高校卒業のとき。

「みんなと別れたくない、卒業したくない。」

そう泣くあなたとワイルドアットハートをいっぱい歌ったね。本当に数ヶ月後にお別れすることになるなんて思わなかった。なんで気を遣っちゃったんだろうって、後悔もたくさんあったけど、時間をかけて前を向くしかなかった。

「一度きりの人生 転がるように 笑って泣いて生きてゆこうぜ」

 

その後は環境の変化もあって、一年に一回くらいで箱を開けて、思い出をつめていった。年に一回だから、その一回一回を本気で全力で楽しんだ。同窓会のような感じもあったかな。中高の青春を作ってくれた彼らが今も元気にしていることを確認したり、あーこのコールアンドレスポンス懐かしいなーなんて言ったり。なかなか会えない友達と会う機会にもなっていて、お互いの近況報告する時間でもあった。

 

誰かが結婚したり、子どもができたり。何かは変わっていくと思っていたけれど、この日がくることは予想だにしなかった。

 

テレビやメールでの情報の波が押し寄せて、頭が真っ白になった。涙を流せないくらい何も考えられない。外側では気丈に振る舞ってるものの、内側では思考が止まっていた。それでも彼らは自分たちの言葉で私たちに想いを届けてくれた。その言葉、行動を必死で自分の中に落とし込もうとするけれど、完全にはわからない自分もいる。どう振る舞うこと、捉えることが正解なのかわからない。それでもいいよ、大丈夫だよ、って寄り添ってくれる彼らに甘えようって思った。

 

この宝箱を閉じたくない、まだ新しい宝をたくさん入れていきたい。本当はそう思っている。それでも蓋が閉まるカウントダウンは始まっている。車輪はもうすぐ回りはじめる。

だから。

あと2年間で後悔のないように。彼らと作る時間という名の、たくさんの宝を作って、目に焼き付けて、無我夢中で走り続けるしかないんだ。

 

たぶんあの時僕らは歩き出したんだ 互いに違う道を

いつか二人会った意味が分かる時まで

車輪が回り出したら 旅は始まってしまうから

もうはぐれないように 過去をそっと抱きしめる